重い荷物を運ぶトラックで「低床(ていしょう)」という言葉を見聞きしたことはありませんか?
低床車は、荷台の床が地上から低い位置に設計された車両で、積み降ろし作業を劇的に楽にします。
2トンから10トン級まで幅広い車種で採用されていて、そのメリットは大きいと注目されています。
近年登場した新型トラックも低床設計を採用しており、大きな注目を集めています。
積載量を増やしつつ運転の負担を減らす工夫として、低床車両は注目を集めています。
低床とは?基礎知識と意味

「低床(ていしょう)車」とは、車両の荷台床面が地上から低く設計された車のことです。一般的なトラックでは、荷台の床面までの高さ(床面地上高)を高めに設定していますが、低床車は床面を低くできるよう車体構造が調整されています。これにより、▽荷物の積み下ろしが楽▽車両への乗り降りがしやすい▽重心が低く安定性が増す――などの効果があります。
低床にする仕組みの代表例として、前輪と後輪のタイヤサイズを変える方法があります。例えば、後輪のタイヤを小径化して床面高さを低く抑える設計が一般的です。このように床面を低くすることで、荷台までの高さが下がり作業効率が上がります。
低床車の定義
低床車とは荷台部分の床が通常よりも低い設計をされた車両を指します。具体的には、地面から荷台床面までの距離が小さくなるよう、ホイールやサスペンションなどの構造を工夫しています。これにより、一般的なトラックに比べて荷台の床が低い位置にあります。トラックだけでなく、荷物用トレーラーやシャーシなどでも同様の設計が取り入れられています。
低床車の仕組み
低床車では、床面を低くするために後輪のタイヤを小径にしたり、前輪も含めて全て小径タイヤに交換したりします。また、サスペンションやホイールアーチの形状を低床用に設計し直すこともあります。例えば、後方の荷台が低くなるように後輪だけ小さくした低床車や、前後すべてのタイヤを小さくした全低床車があります。こうした構造変更によって地上高を下げ、荷台までの距離を縮めています。
低床車の呼称・別名
低床車は別名として「ローフロアトラック」や「ローキャブトラック」と呼ばれることもあります。これは英語の low-floor や、低いキャブ(運転席)といった意味合いから由来します。また、メーカーや用途に応じて「フラットロー」「キャブオーバーロー」など様々な呼び方が混在していますが、いずれも荷台床面の高さが低い車両を指す言葉です。一般事業者や運転手の間では単に「低床車」と呼ばれることが多いです。
低床車のメリット

低床車最大のメリットは積み降ろし作業の容易さです。床面が地面に近いため、
- 重い荷物の積み降ろしがしやすい
- 荷台への乗り降りが楽
- 重心が低く車体が安定
- 旋回性能が向上し取り回しがしやすい
- 輸送効率が向上し運送コスト低減に貢献
という効果が期待できます。例えば高いパレットや資材を積む際、低床車ならクレーンや高気圧リフトを使わずに地上から直接積めるので作業時間と人手を大幅に削減できます。また、床面が低いことで車両の重心が下がり、走行安定性が増すため高速道路や悪路での安心感が向上します。
積み降ろし作業の効率化
床面高さが低いと荷台へのアクセスが容易になり、人的な苦労が減ります。例として、重い製品や農産物を運搬する現場では、パレットをフォークリフトで持ち上げる高さが減少するため、フォークリフト作業の負担が軽減されます。この結果、作業スピードが速くなり、生産・物流の効率が上がります。
走行安定性の向上
低床により車両全体の重心が下がるため、コーナリング時や横風時の安定性能が向上します。重量物を積載して長距離を走行する際にも、低床構造は揺れや傾きを抑え、安全性を高めます。特に大型トラックでは、低床・多軸化することで荷重配分が最適化され、安定した走行が可能になります。
ドライバーの負担軽減
低床車は乗り降りもラクになるため、ドライバーにとっても使い勝手が良いです。事務所や倉庫で荷物を手積みする作業者も、低い荷台までキーキングしたり乗り降りのために階段状のボードを使用せずに済むため腰や脚の負担が軽減されます。高齢者や女性ドライバーでも扱いやすい設計とされており、人手不足時代のドライバー確保にも寄与します。
輸送効率の向上
低床構造を採用したことで、同じ車両重量制限の中で積載量を増やせるケースがあります。上で紹介したいすゞの事例では、大型トラックの低床3軸車が従来より最大積載量を400kgアップさせて14.4トンを実現しました。これはタイヤサイズを見直し、床面を下げた設計が寄与しています。結果として、一度に運べる荷物が増え、往復回数の削減やコスト削減につながります。
低床車のデメリット

一方、低床車にはいくつかのデメリットもあります。代表的なものとして、
- 乗り心地が硬くなる
- 専用部品による整備コスト増加
- 車高低下による走破性の低下
などが挙げられます。
乗り心地の悪化
低床車はタイヤを小径化したりサスペンションの余裕が減ったりするため、路面の凹凸を伝えやすくなり、乗り心地が硬くなります。特に悪路や工事現場など路面状態が良くない場所では軽い振動が増え、人や荷物への衝撃も大きくなることがあります。また、衝撃吸収力を確保するためにショックアブソーバーを強化した対策をするケースもありますが、なじみのないドライバーは最初に違和感を感じることがあります。
整備・コスト負担の増加
低床車は前後で異なるタイヤサイズを使用することが多いため、交換用タイヤやスペアタイヤの管理が一般車に比べて煩雑になります。また、特殊なホイールやサスペンションを使う場合もあり、部品費用や整備費用が若干高くなることがあります。さらに、低床化に伴いワイヤーハーネスの取り回しやエアホースの配管が複雑化することもあり、整備工数が増える可能性があります。
走破性・クリアランスの低下
床高が下がる分、地形の凸凹や段差に対応できる車高の余裕が減ります。たとえば、荒れた工事現場や深い轍(わだち)などでは車体下部を擦ってしまうリスクが高まり、注意が必要です。また、高速道路の速度抑制帯や急な坂では、アンチガロンにつまづく可能性があります。なお、これらの問題を避けるために高い高さが求められる現場や長距離輸送では、用途に応じて高床仕様の車両を選ぶ場合もあります。
全低床・超低床とは?特徴と違い
低床車にはさらに床面を下げた「全低床」「超低床」といった種類があります。それぞれ床面高さの低くする方法が異なり、用途やメリットも変わってきます。
全低床トラックとは
全低床トラックは文字通り、前後すべてのタイヤを小径化(低床用)に交換して床面を低くした車両です。前輪側も小径タイヤにすることで、運転席から荷台までの床の高さ差が少なくなります。そのため、乗り心地や操縦性への影響が後輪だけを変えた低床車よりも緩やかで、安定感が得られます。低床化の工夫としては、タイヤだけでなくホイールも径の小さいものに交換して床面をさらに下げることもあります。
超低床トラックとは
超低床トラックは、前輪側には通常の大きなタイヤのままにして、後輪だけをより小径にして床面を極端に下げる車両です。この構造ではキャビン高と荷台高の差が大きくなり、荷台部分が非常に低い位置になります。その結果、
荷物の積み込みや降ろしがさらに簡単になります。大型機械や重いパレットなどをクレーンなしで積む場合などに適しており、特に重量がそこまでない大きな貨物を積む現場で重宝されます。例えば、超低床車なら高層ビルの機械棟への資材運搬や構造物の部材搬送で、荷台に大型クレーンを備えずに作業時間を短縮できるメリットがあります。
| 種類 | 床面高さ | タイヤサイズ | 用途・特徴 |
|---|---|---|---|
| 低床車 | 標準より低め | 前輪は通常、後輪のみ小径 | 一般貨物の積み降ろし効率化 |
| 全低床車 | さらに低い | 前後輪とも小径 | 高い乗り降り性、安定性 |
| 超低床車 | 最も低い | 前輪通常、後輪更に小径 | 大型貨物の積み込み作業向け |
低床車と高床車の違い
トラック選びでは、低床車と高床車(コンクリートミキサー車や林業用などの高い車)が比較されることがあります。低床車の床面地上高は高床車に比べて低く、主に操作性と積み降ろし作業のしやすさが重視されます。高床車は地上から荷台床面までの高さが大きいため、車両全備重量の多くが積載に振り分けられる点や、車体を長く使え、省スペース化が可能です。
| 区分 | 低床車 | 高床車 |
|---|---|---|
| 床面高さ | 小さい | 大きい |
| タイヤ | 前後で小径あり | 前後とも大径 |
| 用途例 | 一般貨物輸送、長距離輸送 | 土木・建築資材、重機運搬 |
| メリット | 積み降ろし容易、安定走行 | 大きな荷物・重量物を搭載可能 |
高床トラックとは
高床トラックは床面地上高が高いトラックで、通常は前後輪同径の大径タイヤを採用します。重量物を多く積み込む場合に有利で、例えば工事現場で大型の重機や鉄筋コンクリート製品を運ぶ際に使われます。床面高が高いため車体形状にゆとりが生まれ、大型ワイドボディなどにも適応しやすいのが特徴です。
使い分けのポイント
低床車は積み降ろしを短い距離で行いたい場合に選ばれます。逆に、高床車は狭い道路や高さ制限のない現場、重量物を多く積む際に適しています。多くの中小企業では2~4トントラックに低床を採用し、乗降性や作業効率を重視します。一方、大型路線や建材輸送、林業現場では高床車が選ばれるケースが多く、用途に応じて両者を使い分けています。
低床車の活用例と最新トレンド
低床設計は近年ますます広く採用されています。
- 大型トラックの最新モデル例
- 中・小型トラックや特殊用途車
- 物流業界の人手不足対策
- バスや公共交通機関の低床車両
大型トラックでの活用例
2024年のジャパントラックショーでは、いすゞやUDトラックスが共同出展し、新型低床トラックを披露しました。いすゞ「ギガ」の新型では低床3軸車が設定され、従来の23.5t車から最大積載量を14.4t(400kg増)に拡大しています。またUDトラックスでも「クオン」20周年モデルに低床4軸車が登場し、多くの注目を集めました。これらの新型モデルは、積載効率を上げてドライバーの負担を軽減する狙いがあります。
中・小型トラックの低床活用
2~4トントラックでも低床設計の機種が多数流通しています。宅配や配送用途の小型トラックでは、乗降性を重視してキャブオーバーロー(ローキャブ)型と呼ばれるタイプが多く採用されます。農作業や建築資材搬送向けには、ダンプ車やユニック車(クレーン付き)、冷凍・冷蔵車など多様な低床仕様があります。また、小型EVトラック(軽トラッククラス)でも、床下バッテリー収納を低床化につなげたモデルが増えており、物流業界のEV化においても活用が進んでいます。
物流業界と最新動向
近年の人手不足や2024年以降の長時間労働制限を背景に、物流効率化の取り組みが進められています。その中で低床車は、荷役作業時間の短縮や1回あたりの積載量増加に寄与する車両として期待されています。また、多軸車両の導入と組み合わせることで、1台あたりの輸送量を増やしトラック運転手1名の負担を軽減できます。このような背景から、低床設計は現場の生産性向上策として高く評価され、各トラックメーカーも積極的に低床タイプをラインナップに加えています。
バス・公共交通における低床車両
低床コンセプトはトラックだけでなく公共交通機関でも採用されています。路線バスや電車では、乗降口の床面を低くした「低床式車両」が普及しており、高齢者や車いす利用者が乗り降りしやすい設計になっています。こうした技術はトラックとは目的こそ異なりますが、基本的には車両の床高を低くするという共通点があります。物流車両と同様に、人が頻繁に乗り降りする用途で低床化が進められています。
まとめ
低床車とは、荷台の床面が地上に近い位置にある車両のことです。床面を低くすることで、荷物の積み降ろしが楽になるほか、重心が下がることで走行安定性が向上するメリットがあります。特に物流現場では、ドライバーや作業者の負担軽減につながるため幅広く採用されています。
一方で、床を低くするために小径タイヤを使用することから乗り心地が硬くなったり、部品点数が増えて整備費用が上がったりといったデメリットも存在します。これらのメリット・デメリットを踏まえ、用途に応じて低床車と高床車を使い分けることが重要です。
最近の大型トラックでは、新型モデルに低床設計を積極的に取り入れ、より多くの荷物を効率よく運べるよう改良が進んでいます。中・小型トラックや公共交通機関のバスにも低床仕様が増えており、あらゆる場面で低床技術が導入されています。読者の皆さんもこの記事で「低床とは何か」を理解し、車両選びや物流設計に役立ててください。