いすゞフォワード増トン車は、通常の4トントラックよりもシャシーを強化し積載量を大幅に増やした特別仕様車です。2024年発表の最新モデルには新設計の6.7L直列6気筒エンジンが搭載され、最大積載量は11.9トンに達しています。フォワードシリーズ初の重量級車両として、中型クラスと大型クラスの中間需要を担う存在です。本記事では、2025年最新情報をもとにこの増トンフォワードの特徴や導入メリットをわかりやすく解説します。
目次
いすゞフォワード 増トン車とは?
増トン車は、中型トラック(4トン積みクラス)の積載量を増やすために、車軸やフレームを強化して作られた特別仕様の車両です。一般的な4トントラックの最大積載量は3.5~4.5トン程度ですが、増トントラックでは6.5~8トン前後まで引き上げられています。そのため強化大径タイヤやナットの数を増やした車軸、大型ブレーキなどで構造を補強し、高積載でも安全に走行できるようになっています。
国内では2007年の道路運送車両法改正により、中型トラックの総重量上限が約10.7トンから11トンまで緩和されました。これを契機に、既存の4トントラックを積載量6トン以上に増やす「増トン化」が広まり、物流や建設、特殊輸送の現場で需要が高まっています。
いすゞフォワード増トン車の誕生背景
いすゞフォワードはもともと4トン~8トン積みの中型トラックですが、近年の物流量増加に伴い、さらなる大容量輸送へのニーズが強まりました。そこで2024年、いすゞはフォワードシリーズに16トン・20トン・22トンクラスのGVW超過モデルを追加。新開発の6.7Lエンジン(DB6A)を採用し、フォワードの積載量を従来の4トン車の3倍近くに引き上げる増トン仕様車を発売しました。これにより都市部でも運行可能な車体寸法のまま、大型トラック並みの大容量輸送が実現したのです。
要するに、この新型フォワード増トン車はフォワードシリーズ初の大型対応モデルであり、「中型トラックの手軽さ」と「大型トラックの積載力」を兼ね備えています。中小企業のほか、荷量が多い長距離輸送や建設資材運搬など、より大きな積載量が必要な運送業務で期待されています。
いすゞフォワード増トン車の特徴

いすゞフォワード増トン車の大きな特徴は“積載量を大幅に引き上げる強化シャシー”です。フレーム材の厚みを増して剛性を強固にし、車軸・サスペンションは重積載に耐えうる太径仕様にアップグレードされています。その結果、標準仕様フォワード(4トン積み)よりも数トン多い荷物を安全に運搬できるようになりました。特に荷台は最大長7,400mm(長尺用ウイング仕様時)を確保し、11.9トンもの荷物を安定して積載可能です。
外観デザインも一新されています。大型専用フロントバンパーとシャープなLEDヘッドライトを採用し、遠方からの視認性とデザイン性を向上させました。さらに安全装備として衝突被害軽減ブレーキ(AEB)や車線逸脱警報などの先進運転支援システムを搭載。いすゞのテレマティクスサービス「PREISM」対応により、リアルタイムで車両状態や走行データを管理できるため、運行管理とメンテナンス効率も向上しています。
いすゞフォワード増トン車の性能と設計
6.7L直列6気筒エンジン(DB6A)の性能
新型フォワード増トン車に搭載されるDB6A型6.7リッター直列6気筒ディーゼルエンジンは、新開発の高出力モデルです。このエンジンは6×4駆動車で最大出力220kW(300PS)、最大トルク1081Nm(110kgf・m)を発生。重積載状態でも力強い加速力と高速走行性能を発揮します。それでいて従来の6気筒エンジンに比べ軽量化されており、燃費と排ガス性能も改善。最新の排ガス規制(ポスト新長期規制)に適合しており、環境性能も高いのが特徴です。
シャシー・車体構造と積載能力
増トンフォワードではフレーム構造の基本設計を海外向けモデルに統一し、前後車軸への荷重配分が最適化されています。具体的にはホイールベースを延長して荷重支持範囲を広げ、剛性を補強することで重荷重時のフレームたわみを抑制。結果として、最大積載量11.9トンを実現しながらも安定した走行性能を維持できるようになっています。たとえば、荷台フレームには高張力鋼板が多用され、荷重によるフレーム変形を最小限に抑えています。
先進技術: PREISMコネクティッドと安全装備
最新フォワード増トン車には、安全装備と連携する各種先進技術も搭載されています。標準装備のLEDヘッドライトは従来比で照射距離が延長され、夜間走行時の視界を確保します。また衝突被害軽減ブレーキ(AEB)や車線逸脱警報装置が設定され、大型・増トン時の運転支援を強化。いすゞのテレマティクスサービス「PREISM」対応により、遠隔から車両の運行状況や異常をリアルタイムに監視し、メンテナンス計画や安全運行につなげることが可能です。
車両寸法と積載量
フォワード増トン車の車両寸法は全長9,980mm、全幅2,480mm、全高2,880mm(フルキャブ/車両高オプション時)となっています。荷台内寸は長さ7,400mm×幅2,350mm×高さ400mmを確保しており、大きな荷物にも対応可能です。最大積載量は11,900kg、車両総重量は19,905kgで、最小回転半径は8.7mです。標準仕様フォワード(最大積載約4トン、総重量約10トン)と比べると荷室自体の外形寸法はほぼ同等ですが、床面下フレームの強化により積載荷重が大幅に増えています。
いすゞフォワード増トン車のメリットとデメリット
増トン車導入のメリット
増トンフォワード導入の最大のメリットは、一度に運べる荷物量が増えることで輸送効率が飛躍的に向上する点です。たとえば、以前なら2台の普通車で運んでいた荷物を1台でまとめて運搬できるため、輸送回数や走行距離を大きく減らせます。これにより、人件費や燃料費などのコスト低減につながります。また、車体長が中型サイズに抑えられているため、大型トラックほど取り回しが難しくありません。狭い市街地や倉庫内でも運行しやすい点は遊休スペース条件が厳しい現場で大きな利点です。
増トン車導入のデメリット
一方、増トン化に伴うデメリットもあります。まず中核となるのは運転免許資格の問題です。増トン化で積載量が6.5トンを超えると、たとえ車両総重量が11トン以下でも中型免許(旧普通免許)では運転できなくなる場合があります。特に今回のフォワード増トン車(総重量約19.9トン)では大型免許が必須となるため、大型免許保有ドライバーの確保が必要です。また、強化フレームなどで車両重量が増えるため、車両重量税や燃費で不利になる点は無視できません。標準車両に比べて重量税・燃料消費量が増えるため、維持費はやや高めです。さらに、積載量が増えると荷崩れ時の安全リスクが高まるため、荷役や積載方法の管理を徹底する必要があります。
いすゞフォワード増トン車の運転免許と法規制
フォワード増トン車の運転には大型自動車免許が必要です。増トン前の標準フォワードであれば最大積載4トン・総重量約10トンで中型免許(旧普通免許所持)で運転できますが、今回の増トン車は最大積載11.9トン・総重量約19.9トンとなり、大型車に分類されるため大型免許での運転が義務付けられます。これに対し、積載6.5トン未満・総重量11トン未満にとどめた増トントラックであれば、中型免許(現行中型免許または旧普通免許)で運転可能です。
車両区分 | 最大積載量 | 車両総重量 | 必要免許 |
---|---|---|---|
標準4トントラック | 約3.5~4.5t | 約10t未満 | 中型免許 |
増トン4トントラック | 約6.5~8.0t | 11t未満 | 中型免許 |
大型トラック(例) | 6t~ | 11t以上 | 大型免許 |
フォワード増トン車(最大) | 11.9t | 約19.9t | 大型免許 |
なお、増トンフォワードでは最新の排ガス規制に適合した新型エンジンを採用しており、環境性能も向上しています。それでも重量級トラックであるため、走行時の車両重量制限や橋梁制限には注意が必要です。増トン車導入時には、走行経路の重量規制を確認し、車検時のコスト増なども視野に入れる必要があります。
いすゞフォワード増トン車の導入コストと市場動向
新車価格と導入方法(リース・レンタル)
新車導入時の車両価格は高額になりますが、リースやレンタルを活用することで初期投資を抑えられます。いすゞ発表の標準モデル(シャシー+キャブ)の車両価格は、2024年時点で約14,363,000円(東京地区、プレミアム安全装置付き)です。これに荷台やクレーンなど特装を加えると総額が約2,000万円を超えるケースがあります。リースなら月額保険料や税金も含めて支払えるため、導入時の負担を分散させることが可能です。
中古市場と相場
増トンフォワードは新車登場が比較的最近のため、中古市場の流通量はこれから増加していく段階です。ただしトラック市場ではいすゞ車の流通が多いため、年式の古い増トンフォワードも一定数流通するでしょう。同程度積載量の海外向け大型トラック中古車(国内未登録車)と比べれば価格は割安感があり、走行距離や年式によっては費用対効果の高い選択肢になり得ます。
維持費・燃費・ランニングコスト
増トン車は強化部材の重量増や超重量積載による燃耗増が避けられません。実際、増トンフォワードは7速AMT車で約10~12km/ℓ(定地燃費)と、標準フォワード(約13km/ℓ)に比べ燃費は若干悪化します。また、車両重量税や自動車税は標準車より上の区分になるため、毎年の税負担も高くなります。維持費を抑えるためには、荷重に見合った適切なエコ運転や燃料管理が重要です。さらに特殊な荷台やクレーンのメンテナンス費用も念頭に置き、トータルコストを検討する必要があります。
まとめ
いすゞフォワード増トン車は、6.7L直列6気筒エンジン搭載による強力な動力性能と、増強シャシーによる高積載能力を両立した重積載向けトラックです。積載量が大きい分、運送効率やコスト削減のメリットが得られる一方で、運転免許区分の変化や燃費悪化、維持費増加といったデメリットには注意が必要です。導入にあたっては、自社の運送計画や免許取得状況を踏まえたうえで検討することが重要です。適切な運用計画を立てれば、フォワード増トン車は中・長距離輸送や建設現場など、高い積載能力を必要とする現場で有力な選択肢となるでしょう。